21人が本棚に入れています
本棚に追加
/284ページ
丁寧な字で書かれた手紙に目を通し終えたところで、彼はそれを握り潰した。
「チッ……言ってくれるじゃねえか、あの爺さん」
そう呟き、おもむろに彼は煙草に火を着ける。
草一つ生えていない荒野に、突風が吹き抜ける。
それは彼が被っていたテンガロンハットを容赦なく吹き飛ばし、その長く伸びた髪をあらわにさせた。
漆黒の髪は風に揺れ、陽光に照らされる様は何とも言えず、荘厳に映る。
「いい加減邪魔だよなぁ、この髪」
だが、彼自体はそれを気に入ってはいない様子。
邪魔くさそうに髪を押さえながら、吸っていた煙草を地面に捨て、火を消し去った。
「さぁーて。仕事は仕事だし……おっぱじめるかねぇ」
ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、彼は荒野を歩き出す。
それに触れないかのように辺りは静まり、ただ、その足音だけがこだましていった――
最初のコメントを投稿しよう!