プロローグ

2/2
21人が本棚に入れています
本棚に追加
/284ページ
  丁寧な字で書かれた手紙に目を通し終えたところで、彼はそれを握り潰した。 「チッ……言ってくれるじゃねえか、あの爺さん」 そう呟き、おもむろに彼は煙草に火を着ける。 草一つ生えていない荒野に、突風が吹き抜ける。 それは彼が被っていたテンガロンハットを容赦なく吹き飛ばし、その長く伸びた髪をあらわにさせた。 漆黒の髪は風に揺れ、陽光に照らされる様は何とも言えず、荘厳に映る。 「いい加減邪魔だよなぁ、この髪」 だが、彼自体はそれを気に入ってはいない様子。 邪魔くさそうに髪を押さえながら、吸っていた煙草を地面に捨て、火を消し去った。 「さぁーて。仕事は仕事だし……おっぱじめるかねぇ」 ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、彼は荒野を歩き出す。 それに触れないかのように辺りは静まり、ただ、その足音だけがこだましていった――  
/284ページ

最初のコメントを投稿しよう!