薄暮

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両手からこぼれ落ちる涙のあとには きれいな花が咲くように   あとからあとからあふれでる涙を 止める術を知らないわたしは、   あなたが楽になってくれるようにと祈りながら、 ただただ、 両手で涙を受ける事しかできないのです。   差し延べた手の先にあなたがいるのに、 私はここに存在しないかのような、 空虚さにとらわれる。   幻でもいいから守りたいと願った自分の愚かさを呪いながら、   すべてを知るあなたの哀しみを、 私は知らない。 なにも知らない私は、 あなたの哀しみを理解できない。   そんなにつらい真実ならば、 チョコレートで厚く塗り潰そう。 甘い香りが脳細胞を破壊してしまうように。 何もかもわからなくなるように。 すべてが幻になるように。     守りたいあなたはもう此処にはいない。 警告をならす赤い信号を無視して あなたを連れ出した。   幻の中、唯一とった行動があなたの命を縮めてしまったのだろうか。   壊れていくあなたを見たくなくて、 連れ出したのにね。   それはわたしの過ち。     あなたを殺してしまうような摂理なら、 あなたを活かす手段もあったろうに。   今更ながら、 それを探りにいきます。   あなたはこの世にいないけれど、 あなたの思念はこの世に溢れているから。   死んだ人より生きてる人が大事なの。 生きてる人が大切なの。   分かってくれますか?   それでいいと思ったなら、 どうか私を導いてください。
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