~第一章『退屈』~

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頭の良さ以外俺とは対照的な女だと、いつも思う。 こいつは俺の唯一の苦手な存在でありながら、一番の理解者でもある。 そんな彼女が嫌いでもあり、好きでもあった。 彼女こそが俺の、神島 流弥の初恋の人だからだ。 「剣護と春香はいないのか?」 妙に慌てる心を抑えて冷静に尋ねる。 十樫木 剣護。俺が唯一認めている親友。 馬鹿だがいつも陽気でクラスのムードメーカー。 曲がった事が嫌いで、正義感に満ち溢れてる。 剣護の妹である十樫木 春香は湊の事を先輩、先輩とよく慕っている。 剣護のしつけ役で、茶髪のツインテールで、剣護の妹とは思えないほど可愛らしい。 この3人が俺の友人の全て。 教師や他のクラスメートはもとより、もしかしたら親よりも関係は深い。 「剣護と春香ちゃんなら食堂で待ってるわよ」 「そうか、なら湊はそっちに行け」 「なんでそうなるのよ!流弥も一緒に食べるのよ!!」 関係が深いからといってあれもこれも一緒とベタベタするのは俺のキャラじゃない。 身動きしない流弥の手を湊はぎゅっと掴み、ぐいぐいと引っ張る。 「放せ…」 小さく呟きながら俺の手を掴む湊の手を振りほどく。 「俺は必要最低限の付き合いしかしない。それはお前が一番よく知ってるだろ?」 「流弥は付き合いが悪すぎるのよ!」 湊の長く一本に縛った髪が揺れる。 湊はさきほどより強い力で俺の手を掴む。 「なんでだと思う?」 言い放ちながら自分でも怯えてしまうほどの冷徹な眼差しを湊に向けた。
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