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「実はさ…僕もなんだ」
「え?」
沙希が驚いたのか、目を少し大きく開く。
「僕も…この景色が好きなんだ。この景色を一人占めにしたかった」
「本当に!?」
「うん、本当。」
「すごい!あたしとおんなじこと考えてる人がいたなんて!」
そう言い、一気にテンションが上がる沙希。
「僕も驚いた。今まで誰も分かってくれなかったから」
「そうなんだよね…。なんでこの良さが分からないんだろうね?」
上機嫌になったのか、沙希の声のトーンが少し上がっている。
「そっか…渡辺君も好きなのか」
沙希がぼそっと呟く。
「ん?」
「ううん、なんでもないよ」
そう言い、沙希が靴箱の時のようにニコッと笑う。
「でもさ、吉田さんが一人で帰るのって危ないよ」
「どうして?」
「だって…女子だし」
今まで女子の心配なんてしたことがない。
だからなんと言えば良いのか分からない。
ただ、素直に危ないと思った。
なぜこんなことを言ったのか、自分でも判らなかった。
「じゃあ…一つお願いしてもいいかな?」
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