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「行かなくちゃ」
もうその時が来た。
俺は神楽が電車に乗る直前に右手を握った。
まるで引き止めるかのように。
「離して」
お前は振り向きそれだけ言った。
離さなきゃいけないことは分かってた。
でも、
離せなかった。
俺が伝えたいのは・・・
「好きでさァ」
それだけだった。
泣きながら抱きついてくるのを優しく受け止める。
サヨナラとか、
ありがとうとか、
出来るだけ聞きたくない。
だから、俺は神楽の唇を塞いだ。
初めてしたキスの味は、二人の涙だった。
「じゃあな・・」
抱きしめながらそう呟くと返ってきたのは一言。
「ありがとう」
ギリギリまで離したくなかった。
ゆっくり離して見つめると、泣きながらも笑ってた。
だから、俺も笑顔で泣いたんだ。
「ありがとう」
「サヨナラ」
初雪を見る度俺は思う。
お前は今、何をしているだろうか
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