銃口閃火……Prologue

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銃口閃火……Prologue

ひぃひぃ と 情けなくも50歳を過ぎた 大人が 涙と鼻水 口からは泡までも吹き出しながら 何かから逃げている 『助けて… 助けて… 誰か… か… 金ならある』 周りに人影すら見えない深夜の公園で この男は ヒーローに縋る小学生のような目で 助けを求めていた 数多の雑誌に寸評を述べるのが この男の仕事 つい先月も メジャー雑誌に 『これからの社会と人の在り方』などと 大それたタイトルの御託を掲載したばかり そんな男が今 子供の様に泣きじゃくり 助けを求めている 背後で 砂を踏み締めるような ジャリッという音が聞こえた時 男は 自分の下腹部にジワリと広がる温もりを覚えた 余りの恐怖に失禁してしまったのだ…… 『貴方がいけないんだ』 物音の主が 男に向かって小声で言う 『貴方の言葉は 差別以外の何物でもない… そんな人間が評論家等と宣うのは どうかと思いますよ』 『なぁ… 金だろ?そうだよな?金が欲しいんだろ? 今 此処に百万ある… これでは足りないか?』 必死に物音の主に交渉するが 相手にされていない 『「リアル」が「イミテイション」を語るな… 』 眩しい閃光と共に 命乞いをする男の腹部が爆ぜた 面白いようにビクビクと痙攣し 白目を剥いた男の傍らで 物音の主が 微笑んでいた
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