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同じく、とある中学校の二階から景色を眺める少年がいた
校則ギリギリのような赤みがかったショート、茶色い垂れ目をしていて、どこか弱そうな顔をしている
その少年はふと、黒板の上にある時計を見た
時計が8時50分を指していることを確認すると、机に出していた教科書やノートを引き出しにしまい立ち上がる
「よってこの数式は……」
「先生」
授業をしている教師の言葉を遮り、少年は言葉を発する
「仕事の時間ですので、帰ります」
「今日はえらく早いな」
少年は荷物を持ち、教師に向かって歩きだす
「会議があるので」
「そうか。誰か代わりにノートを……」
「大丈夫です。何とかなる秘策がありますので」
少年は教師の前を通りすぎ、教室の扉を開ける
「それに、ノートを書いてくれる友達はいませんから」
少年は笑顔で言う
しかし、その表情には悲しみもあった
「あとその数式、xの位置が間違ってますよ。」
少年が教師に向かってそう指摘すると、教師は黒板を見て慌てて直しはじめる
それを見た少年は無表情で教室を出た
少年は教室を出ると制服のポケットから何かを取り出す
そして耳に着けた
耳に着いているそれは、口元までマイクが伸びていた
「神谷(コウヤ)さん、今から向かうのでエンジンをかけてもらってください」
『了解しました。太郎様』
太郎と呼ばれた少年は歩きながら、誰かと通話する
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