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憧れ続けた人がいた。
髪の毛は寝癖だらけで、シャツにも皺が寄って、おまけにネクタイはいつも曲がっていて。
授業中、ずれた眼鏡をチョークだらけの中指で持ち上げる仕草なんかは、いたたまれないぐらいに情けなく見えた。
そんな彼は、一歩や二歩間違っても「格好良い」部類の人間ではなかったと思うけれど、それでも。
「相沢」
私の名字を呼ぶ優しい声が何より愛しいと思えた。
目があったその瞬間だけは、彼を独り占めできるような気がしていた。
私にとっては誰よりも格好良くて愛しいヒーローだったのだ。
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