183人が本棚に入れています
本棚に追加
手を伸ばした。
叫んでいた。
涙で視界も霞み、彼女の顔もよく見えなかった。
俺は無力だった。
恨んださ、自分の無力を。彼女の運命を。
俺は叫び続けた。
無意識に、がむしゃらに。ただ、それしかできなかった。
一番見たい彼女の姿が涙で見えない。
それでも……、それなのに……。
彼女が最後に、涙を流しながら困ったように笑っていたのだけは、鮮明に頭の中に浮かんだ。
これはエピローグ。
彼と彼女の物語は終わった。
バッドエンド――つまらない結末。
それならば、書き変えろ。
自分の人生を、自らの力で。
用意されたつまらない結末など変えてやれ。
彼と彼女の物語は終わった。
彼は終わらせたくなかった。
だから彼は一歩踏み出した。
「書き変えてやるよ。俺が望む結末(みらい)へな」
青年は、剣を抜き去った。
.
最初のコメントを投稿しよう!