‐終わりの始まり‐

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「ハァ……!ハァ……!」 「おい、いたぞ!あっちだ!」 夜の森の中を走る少年が一人。みすぼらしい服装に、既に血だらけになった裸足。 そのまだ発達途中の体には少々大きすぎる剣を抱えて、必死に暗い森の中を走っていた。 後ろからは怒声と足音。 そう、少年は逃げていた。 「あのガキィ!あれはこの村の希望なんだぞぉ!」 「あれを売ればとんでもねぇ金が入るんだ!絶対捕まえろ! 剣がなけりゃ、金どころか殺されちまう!」 息があがる。胸が苦しい。足が縺(もつ)れる。 「ハァ……!渡す……もんか……!」 少年は駆けた。が、無情にも目の前に現れたのは崖。 下を覗けば、暗闇の中にうっすらとゴウゴウと川が流れているのが見えた。 「追い詰めたぞ!」 少年がビクリと体を震わせ振り返ると、大勢の大人達の顔が手に持った明かりに照らされていた。 「さぁ、その剣を渡せ」 一人の男が手を伸ばす。 少年が一歩下がる。 男が近寄る。 また少年が下がる。 そして…… 「……あっ!」 「……!?」 少年は足を滑らせ、崖下へと落ちていった。 男が慌てて崖下を覗くと、大きな水柱がたっていた。 「探せぇ!」 しかし、何日たっても、少年も剣も見つからなかった。
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