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「いえいえ、私はマスターに話を聞きますので」
「つれねぇなぁオイ。どっちに聞こうが一緒じゃねぇかよ」
そう言うと、三人の男はゲラゲラと笑った。
酒気に塗れたその息は、とても不快だった。
女が顔を歪め、拳を握り絞めたその時。
「うるさい」
店の隅から、低い、青年の声が聞こえた。
「あ゛ぁ?おい、誰だよ今の」
笑っていた男達は客を睨む。巻き込まれては堪らないと、睨まれた客達は首を必死に左右に振る。
「うるさいってんだよ」
男達は再び声がした方に顔を向ける。
そこには、全身を黒い服で身を包んだ男が、睨むようにして立ち上がっていた。
男は白銀の、少し長めの髪を揺らして口を開く。
「ただでさえうるさい酒場を更に悪化させやがって。
お前達のきったねぇ声で酒が不味くなんだろうが」
静まりかえる店内。
そんな中、女はその青年から目が離せなくなっていた。
「おい、餓鬼。おめぇ……、たたじゃすまさねぇかんな?」
「やってみろ、この顔面山賊野郎」
「てめぇ……!」
男達が一斉に青年へと走る。客は巻き込まれまいと避けていった。
一人の男が拳を振り被ったそのとき、青年の拳が男の顔面にめり込んだ。
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