Intro

3/14
前へ
/449ページ
次へ
「…ナツ兄…うるさい…」 不機嫌そうに体をお起こし、ブツブツ文句を言うのはこの家の長女にして夏樹の妹、凛(りん)。 ちなみに、不機嫌なのは、単に寝起きだからではない。 常に機嫌が悪いのだ。 最早、機嫌のせいではないのかもしれない。 「お前も起きろよ。…ったく、何で毎日、ベッドに頭ぶつけて目ぇ覚まさなきゃいけねぇんだよ…」 夏樹も凛につられてかぶつぶつ文句をいい始めた。 「…ナツ兄の背が無駄に無駄に高いからでしょ? そんなこと、最初からわかりきってたことじゃん…」 凛はご親切にも丁寧に回答してくださった。 でも、それは半分正解。 確かに、夏樹が小学校高学年の時に蒸発した親父の遺伝子は、120%夏樹に受け継がれ、現時点で身長195cmという驚異的なまでに成長した。 ……全くもって嬉しくないが、と夏樹は思う。 夏樹は身長が高いことに強いコンプレックスを持っていた。 よくその身長を羨ましいと言われるが、本人にとっては嫌味でしかないのだ。 まるでコントのように色々な所に頭をぶつけ、そして、見知らぬ人に笑われてしまう。 「せめて175センチ位だったらな……」 「無理でしょ」 「……ぐっ…!」 凛の容赦ない言葉が胸に刺さる。 夏樹はぶつけた頭をさすった。 不幸中の幸い、コブにはなってないみたいだ。 夏樹は眠い目を擦りながら真新しい制服に着替え、台所へ向かった。
/449ページ

最初のコメントを投稿しよう!

547人が本棚に入れています
本棚に追加