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「…ナツ兄…うるさい…」
不機嫌そうに体をお起こし、ブツブツ文句を言うのはこの家の長女にして夏樹の妹、凛(りん)。
ちなみに、不機嫌なのは、単に寝起きだからではない。
常に機嫌が悪いのだ。
最早、機嫌のせいではないのかもしれない。
「お前も起きろよ。…ったく、何で毎日、ベッドに頭ぶつけて目ぇ覚まさなきゃいけねぇんだよ…」
夏樹も凛につられてかぶつぶつ文句をいい始めた。
「…ナツ兄の背が無駄に無駄に高いからでしょ? そんなこと、最初からわかりきってたことじゃん…」
凛はご親切にも丁寧に回答してくださった。
でも、それは半分正解。
確かに、夏樹が小学校高学年の時に蒸発した親父の遺伝子は、120%夏樹に受け継がれ、現時点で身長195cmという驚異的なまでに成長した。
……全くもって嬉しくないが、と夏樹は思う。
夏樹は身長が高いことに強いコンプレックスを持っていた。
よくその身長を羨ましいと言われるが、本人にとっては嫌味でしかないのだ。
まるでコントのように色々な所に頭をぶつけ、そして、見知らぬ人に笑われてしまう。
「せめて175センチ位だったらな……」
「無理でしょ」
「……ぐっ…!」
凛の容赦ない言葉が胸に刺さる。
夏樹はぶつけた頭をさすった。
不幸中の幸い、コブにはなってないみたいだ。
夏樹は眠い目を擦りながら真新しい制服に着替え、台所へ向かった。
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