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ハァと溜め息をつく無概、不可抗力とは言え、些かやりすぎた事に多少ながら後悔の念が込み上げた。
「無概君、怪我はない!?」
そんな中、背後からの必の声に無概は
「俺の怪我なんかより、さっさと此処から逃げますかね、実際」
強引に必の手を握り、その場から走り出した。
「えっ、無概君? ちょっと!?」
さすがに、この場面を他人に目撃されるのは不味いだろう────自分とは違い要の様な優等生には。
あのストーカー男、もとい田中が言った通りなのだろう。
自分の様な居ても居なくても同じの様な奴と
クラスから頼られて、人気のある必(かなら かなめ)要 とでは社会的な必要性は違う。
「はっ、所詮人間──自分なんてそんなもんだよな」
田中が倒れた場所から離れながら無概は小さくそう呟いた。
だがその表情には悔しいと言った物ではなく、最早何かを諦めた表情であった。
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