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「……で、今日は家に何か用でもあったんです?
まだ会ってから一ヶ月は経って無いですが」
彼女──冬空七星がこの家を訪ねるのは、無概が知る限り別段珍しい事では無いのだが。
「何だ、用事が無ければ私はこの家に来るなとでも言いたいのか?」
「………」
ええ、出来れば───と、無概は思ったが敢えてそれを口に出す事はなかった。
冬空の問いに答えず、無概は無言のままキッチンに向かい、棚からトレーと群青色に染色された半透明のグラスを二つ取り出すと、そのまま冷蔵庫の扉を開け中から烏龍茶の入ったペットボトルと一月前に冬空がこの家に置いていった焼酎を取り出しトレーに載せる。
「相変わらずだな、無言は肯定と受けとるぞ無概?」
「冬空さんが納得する言い訳が無かったんで……どぞ」
席に着き、焼酎を烏龍茶で割った物を冬空に渡しながら無概はそう呟く。
「ふっ、賢明だな」
グラスを受けとり苦笑する冬空。
どこかギクシャクとした関係、だか二人にとってこれは会う度に変わらないやり取りなのだ。
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