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「んくっ───ぷはっ」
まるで只の水の用に一気に飲み干し、一息つき口を開く。
「何、偶々明日から一週間ばかり休みを貰っただけさ。
此れと言ってやることも見つからないので、数日程愚弟の世話でもしようと思ってな」
「………、そうですか」
思わず耳を疑った。
いつもより数週間速く、偶々自分の様子をあの母親から報告する様に言われて来ただけだと思っていたのだ。
それを愚弟───自分の世話をすると目の前の人物は言った。
嗚呼、厄介な事になった。思わず心の中でそう呟く無概。
犬飼無概と冬空七星───彼と彼女の関係は義理の姉弟(してい)関係なのだ、父親は無概が知る限り四回程、結婚と離婚を繰り返し各々の結婚相手と子を成していた。
そして彼女。 冬空七星は父親が一回目の女性との間に産まれた子供なのだ、昔は彼女も犬飼の名字を持っていたのだが、無概の母親と結婚した時。
理由は一切分からないが彼女を含めたそれぞれの自分の子を結婚相手に引き渡したらしい。
そんなとても気まずい関係にある義理の姉の思いもよらない申し出。
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