犬飼無概の人生講座 その1-3

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翌日の朝、無概は昨夜から一週間の間、一緒に暮らす事になった冬空七星に自宅の合鍵を渡し身支度を整えて玄関を出た。 途中、昼飯を買う為に登校途中の駅前のコンビニに足を運ぶ。 本来ならば節約の為に自炊した方がいいのだが、生憎、母親からの一ヶ月の仕送りの金額が多いお蔭で無概の朝昼晩は全てコンビニ弁当。 幼い頃は、母親の手料理の思い出はあるが、それは忘却されて覚えてはいない。 「いらっしゃいませー!」 一定の速度で開かれる自動ドアを通り、無概は客である自分に向けられた店員に特に言葉を介さず、入口付近に用意されたプラスチック製の籠を取りだし弁当が陳列された棚に向かう。 特に弁当を選ぶ事に吟味しなず、一番初めに目のついた物を棚から取りだし籠の中に放り込む、食に関し其れほど興味の無い無概にとって胃の中に入ればどれも同じと思っていた。 そして、そのまま店舗の奥に陳列するペットボトルのコーナーに向かい適当なお茶を取り出す。 「ふう」 大して疲れる様な事はしていないのに溜め息をつく無概。 ふと、全面ガラス張りになっている窓から外の風景を見つめる。 少し早く家を出てしまったのか、外を歩く自分と同じ学生の数はいつもより少なく、数人のスーツ姿の大人達が駅の方向に歩いているぐらいで、とても閑散としていた。
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