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僕がいつもCDを聞きながら空想に耽(ふけ)る公園は、病院の敷地内にあった。 公園といってもジャングルジムや滑り台などの遊具があるわけではなく、しかし広さは中々で、森林浴や散歩には打って付けの、いわゆる「森林公園」だ。 この病院は、医師のレベルは高いがその割に治療費が安いと評判で、心を病んだ人がいつまでもそこにいたがるほど、居心地のいい場所だそうだ。 勿論、そんなのは病院の関係者が流した噂であることも否定出来ない。漫画やドラマならまだしも、理想過ぎる場所はいつだって現実味を持たない。 けれど自然の緑と空の青に囲まれた白い建物。評判が事実であることを示すかのように、そこから出てくる人はみんな笑顔だった。 僕もいつか、あんな風に笑えるのだろうか。 ここに来る度、人々の笑顔を見る度にそう思った。
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