~貞子とチェンメ~

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一流大学に行ってその後の人生を変えてやる。根暗でブスな北澤紗英を返上してやるんだ。高い位置から、私を見下した連中を逆に見下ろし嘲笑ってやる。 この日以来、私はクラスメートに存在をアピールする事を止めた。偏差値の高い大学に行きたい、女としてもっと綺麗になり誰もが望む様な素敵な男を捕まえてやるんだ。 この二つを念頭に置き、机にかじり付き夏休みの間も家と図書館を往復するだけの生活を送った。 そして、あっという間に夏休みは終わり、二学期の登校初日を向かえた―― 登校するなり、私の耳に届いたのは明るく弾けたきった声だった。当然、クラス中から無視されている私の元へは、誰一人として近付いてくる者は居なかった。 席に座り周囲に視線を送ると、肌の黒く焼けた人間がポツポツと目に映った。どうせ男と海にでも行ったんだろうな。そんな事を思いつつ、私は日焼けもしない真っ白な肌を見つめ戒めた。 『ねぇ、あそこに座ってる生ゴミ見てよ!!なんかさ~、完全に終わってるよね……』 『うわっ、本当だぁ!!髪の毛茫々だし、目も見えない。貞子じゃん』 『……なんか、蝿が群がってそうだよね』 夏休みを跨ごうと、私への誹謗中傷は変わらず続いていた。私を指さしながら、中傷している奴らはあの二人ではなかった。 生ゴミに蝿、貞子か……。日々進化する低俗な言動も此処まで来ると笑うしかなかった。
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