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貞子か……。
貞子と言ったらホラー映画に登場する幽霊だったよな。私は、生れつき自分の顔に劣等感を感じている。この歳にして、化粧品の一つも持っていない。髪も黒くストレートに伸び放題。毎朝、顔を洗うだけでとかしもしない。
元が良ければ少しくらい化粧に興味を持てたかもしれない。だけど、劣等感しか感じない私はそれを放棄した。だから、鏡に映る自分の姿や写真というモノに嫌悪感を抱いている。その反動からか、綺麗になりたいという想いは人一倍強い。
呼び名など好きに呼べば良い、顔がキモいとか好きに言えば良い。
ただ……
私の画像を回すという行為には、流石に怒りを感じずにはいられなかった。しかし、それを口すれば業火の中にガソリンを投げ入れるのと同じ事だ。
プライド……。
彼女達の所業に何の抵抗もせず、怒りを必死に堪えるのが今の私のプライドだ。
悔しい、憎らしい、消してやりたい。そんな彼女達に対する強い負の念が、無意識に形となり机上にポタポタと垂れ落ちた。
これ以上、惨めな写真を撮られたくなかった私は、それを直ぐさま真っ白なハンカチで拭った。
口の中は、鉄の味で満たされている。この想いを試験にぶつけてやる。そして、心の中で思う存分にけなしてやろう。楽しい高校生活は捨てる、それを全て目標とする大学に捧げるんだ。私の人生はそこがスタート地点となるのだから。
登校初日は、内面に留めた怒りとの戦いで幕を下ろした。
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