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俺は図書室の扉を開いた
既に生徒は帰宅していて、校内に残るのは部活に勤しむ生徒だけのはずだった
しかし、日も傾き始めて茜色の光が窓から図書室の床と壁と書物を照らす中、そいつは居た
もう夏に入る手前だというのに、冬服のカーディガンを肩からかけて、元々黒かった長いストレートの髪は日光のせいでオレンジ色に見えている
図書室の物なのか、そいつは黙々と本へ眼鏡越しに目を落としている
バタン
扉を閉めた音に気付いたのか、そいつはこちらを向いた
「………」
キッ!と一瞬睨みを入れて再び本に目を落とす
客観的に見れば、俺は嫌われているように思うだろう
だが、俺は知っている━━━━
俺はそいつの前に迷いなく歩み寄る
「…………」
『何か用?』とか、『どうしたの?』とかは全くなく、完全無視を決めているそいつは、ペラペラとマイペースに本をめくってる
「おい、無視はねぇんじゃね?だいたい、睨むとか感じ悪すぎだぞ」
俺は部屋に入って初めてそいつに声をかけた
「………」
そいつは、本から一時目を離して「で?」という感じで俺を見上げる
「だいたい、なんだよその眼鏡、似合ってないぞ」
「あっ……」
と声を漏らすそいつを気にもせず、俺は似合ってない眼鏡を取り上げ、眼鏡という障害無しに目が合う
「ほら、可愛くなった」
俺がそう言うと、顔がみるみる赤くなり、顔を伏せた
「ば、バカッ!早く眼鏡返しなさいよ!」
「なんだよ、お前眼鏡かける程目悪くないだろ?」
「それでも!私のなんだから、返しなさいよ!じゃないと…」
「じゃないと?」
俺は元々知っていた、そいつが何故眼鏡をかけていたかを
さっき睨んだのは図書室に入ったのが誰かみえなかったからということを
それをわざわざ聞いたのは、恥ずかしがるそいつを見たかったからだ
「じゃないと…あ、アンタの顔が恥ずかしくて見れないじゃないっ!!」
ここが図書室という事を忘れてるのか、大声でそう言った、誰も居ないから大丈夫なんだが
「バカかお前は、俺はお前に見てもらいたいんだよ、眼鏡越しにボヤけた俺なんて見るんじゃねぇよ、俺だけを見ろ、それだけでいい」
そう言ってやると、そいつは、日光で紅い顔をさらに、さらに紅くさせて
「バカはどっちよ…、そんな変態みたいな事言って…」
と言って目をつむった
そして俺はそいつの唇に…
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