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その後、シュトッツ・ディートリッヒ大尉は無傷で確保された。
シュトッツ・ディートリッヒを守っていた兵士達は、今では血まみれの死体となっていた。
ヘンリー少尉達に連行されて行くシュトッツ大尉は、パリッとした軍服で凛とした眼をしていた。
背筋をピンと伸ばしているが、彼は今まさに捕虜となっていた
「タバコをくれないか?」
シュトッツ大尉は、ヘンリー少尉に話し掛けたが、ヘンリー少尉にはドイツ語が分からないらしく、ヘンリー少尉は無視する様に歩き続けていた
「タバコなら自分があげましょう。
どうぞ?」
そう言ってタバコを差し出した俺に、シュトッツ大尉は笑みを浮かべながらタバコを手に取った
「すまないな軍曹。
アメリカ軍の捕虜取り扱いは丁寧だな」
タバコを吸い始めたシュトッツ大尉を見て、ヘンリー少尉達もライフルを下ろした
「大尉。
大尉はナチスドイツの秘密兵器開発に従事している様ですが、それは具体的にどの様な兵器なんですか?」
俺の問い掛けに、大尉は深い溜め息を吐きながら答えた
「君もそれが目的か……
まぁ良いだろう。
タバコの礼に聴くが良い。
君達は全容を知らない様だが、我が第三帝国が連合軍に参加する各国より先に、開発と配備に成功すれば、君達連合軍兵士達の終焉は近い…
私が開発に参加しているのは、全てを無に帰す兵器。
それだけだ……」
大尉はタバコを指でもみ消しながら、ズボンのポケットに手を入れた。
すかさずライフルを構えるヘンリー少尉達を見て、シュトッツ大尉はニヤリと笑いながらポケットから手を出す
「タバコを吸うと、どうしても飴が舐めたくなるんでね…!」
何か固形物を素早く口に含むシュトッツ大尉。
俺はしまったと思い、すかさずシュトッツ大尉の頬を殴った。
しかし
「グッ…!
…貴様らに情報は渡さん…!」
口から血を流しながらよろめくシュトッツ大尉。
遅かった。
あまりにも人間らしい眼をしていて、彼がドイツ軍士官である事を忘れかけていた
「…ドイツ第三帝国と…!
ヒトラー総統に栄光あれ!
ジークハイル…!
ハイル・ヒトラー!!」
いきなり叫び出したシュトッツ大尉に、ブライアン大尉が駆け寄って来た
「どうした!?
こいつは何て言ったんだ!!」
だが、シュトッツ大尉は叫び声を残し、そのまま床に崩れ落ちた。
服毒自決をさせてしまったのだ。
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