情報士官 シュトッツ・ディートリッヒ

10/11
前へ
/191ページ
次へ
捕虜とした敵士官の服毒自決。 それには、それ以上の意味があった 「何て言ったんだ!! 答えろフランク!!」 掴みかかるブライアン大尉の眼は、焦りと苛立ちを募らせていた。 ヘンリー少尉達も沈黙し、俺の耳には遠巻きの銃声と、ブライアン大尉の鼻息しか聞こえなかった 「我々が開発しているのは、すべてを無に帰す兵器だ。 それを完成させ、連合軍より先に配備出来れば、俺達連合軍兵士の終焉は近い。 これ以上の情報は渡さん。 そして薬物らしき固形物を飲み、彼は自決しました」 俺の言葉にブライアン大尉は、俺の頬を殴りながら口を開いた 「我々は、そこから先が知りたかったのだ! タイプと重量! そして所在地! コインが死んだお陰で、何も分からなくなったんだぞ!! 連合軍兵士数百数十万の命が掛かった情報がだ!!」 俺を睨み付けるブライアン大尉に、俺は意を決して問い掛けた 「一体何の兵器なんですか? それほど危険な物なんですか!?」 俺の言葉に、ブライアン大尉は平手打ちをしながら答えた 「原子爆弾だ! それ一発で数キロ四方が、数千度を越す灼熱の地獄と化す! そんな兵器をドイツ軍が開発したら、俺達に明るい未来は無い! 俺達は有無を言わさず焼き殺され、ヨーロッパ全体も地獄の淵へと追いやられる!!」 ブライアン大尉の言葉を聞いた隊員達が、動揺を隠せずどよめき出した 「原子爆弾… そんな兵器をドイツ軍が…?」 シュトッツ大尉の遺体を見ながら、俺の頭にはブライアン大尉の言葉が、繰り返し繰り返し響いていた。 連合軍より先に配備出来れば、連合軍兵士数百数十万人に終焉を迎えさせれる。 彼は確かにそんな事を口走っていた。 では、連合軍も原子爆弾の開発を進めているのか? そんな非人道的な大量殺戮兵器を? シェルブール。 この地で俺は、確かに何かを掴んだ。 それは絶望。 それは怒り。 それは悲しみ。 そして真の恐怖。 シュトッツ・ディートリッヒ大尉の遺体を見ながら、俺は近い将来に完成するであろう兵器の名を、怒りと恐怖と共に刻みつけた…………。 数キロ四方が灼熱の地獄と化す兵器。 真の姿を知らずとも、ブライアン大尉の眼が、恐怖を知らしめていた………。
/191ページ

最初のコメントを投稿しよう!

398人が本棚に入れています
本棚に追加