Dデイ

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俺は空を見上げた。 この空は、生まれ故郷のサウスダコタに続いている。 そう考えると、此処が何処でも良い気がしてきた。 俺って案外単純なのかもしれないな。 そんな物思いにふけっていると、空を揺るがす轟音が響いて来た。 上を見上げると、戦闘機の群れが目に入った 「マスタングか! 空は良いトコかぁ!?」 六機のマスタングは、爆弾を抱えながらノルマンディーを目指す。 それを見たドーマンも手を振りながら叫んでいた。 ドーマンの父親さんは戦闘機乗りだった。 第一次大戦で親父さんは戦死したが、ドーマンは戦闘機乗りの親父さんを誇りにしている。 そんなドーマンを見ていると、俺達歩兵と戦闘機乗りが中の悪い事など忘れてしまいそうだ。 中には飛んでる飛行機から飛び降りる空挺隊なんてのもあるが、多分俺には理解出来ない連中だろう。 眼でマスタングを追っていると、沿岸から砲火の音が響いて来た。 いよいよだ…! 俺達の周りにも水柱が上がり、揚陸艇が激しく揺さぶられる。 俺達は急いで装備を確認し、指揮官のブルータス少尉の声を待った。 ブルータス少尉はアフリカ、イタリアを歴戦した優秀な指揮官だ。 そのブルータス少尉が声を掛ける 「いよいよだ! 我々はあの忌々しいドイツ野郎共を、真っ先に殴れる栄誉を貰ったのだ! ぬかるなよ各員!!」 隊員達から返事が返ってくる。 俺も自分の両頬を叩いて気合いを入れる。 俺達もアフリカ、イタリアと連戦した歴戦の戦士達だ。 こんなトコで簡単に死ぬわけにはいかない。 覚悟を決めたその時、揚陸艇の艇長が叫んだ 「上陸1分前!!」 その声に、揚陸艇に乗っている全員の毛が逆立った気がした。 ブルータス少尉が声を上げた 「迫撃砲の孔に注意しろ! 止まっていたら奴らの餌食になる! 上陸したら何も考えずに斜面を目指せ!!」 「上陸30秒前!!」 艇長の声が更に木霊し、俺達はライフルを握り締める 「諸君らに神の御加護があらん事を! またオマハビーチで逢おう!!」 その時、揚陸艇が動きを止めた 「上陸開始!!」 揚陸艇のハッチが下がって行く。 戦いが始まった。
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