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「次の時間はずっとかぶってろよ」 と有本に言い聞かせ、有本はそれを承知した。それは早くおれたちと仲良くしたかったからに違いない。先生が入ってくると、おれたちはクスクス笑った。丁度、ドアの隙間に黒板消しを挟む、というのに似ていたかもしれない。 「先生、一人、お化けが混じってますよ!」  そう誰かがいったら、教室には爆笑の渦が出来ていた。おれの右後ろの席には幽霊のように顔の白い、変なマスクをして、髪の毛で顔の隠れた、変なマスクをつけた有本がいた。おれは振り向くたび腹を抱えて笑った。 「おい! 何やってんだ!」  先生は叫ぶように言った。おれたちの笑い声はそれに飛ばされてしまった。後は冷ややかな説教の空気があるばかりだった。先生は有本の席に駆け寄りマスクを外し、「大丈夫か?」 と言って頭を撫でた。
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