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真面目な奴は勿論笑わなかった。いや、笑いをこらえていただけかもしれない。そいつらが、おれたちをチクった。先生は、松本やおれ、他の奴らを呼び出し、叱った。
「目が見えないんだから、そんなことすんなよ。可哀想だとは思わないのか。」
「目が見えないからいいんじゃないですか。」
誰かが言った。
それから数時間後、おれたちは有本に謝った。
「ごめんな。面白かったからついやっちまった。」
松本がそう言うと、
「いいよ、僕も楽しかった。」
と、嫌に低い声でこう言った。
有本は、生まれた時から目が見えないらしい。自分の顔を見たことが無いという。話し相手が美人かもわからない。しかも、恥、という人間の要素が発達していない。確かに笑われるのは恥ずかしいとは思えども、どんなものが恥ずかしいのかさえわからない。
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