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それからおれはなぜか有本をいじめなかった。有本の盲目、というものに興味があったからかもしれない。もし有本の目が見えているのだったら、おれや松本があんなやつをいじめていないわけがなかった。
休み時間、たまたまおれも有本も一人だったから、おれは話しかけてみた。
「やあ、目が見えないのって、どんな感じなんだ?」
「目隠ししてみる?」
おれはああとうなずいた。有本は自分の目に巻いた布をほどいて机の上に置いた。
そのとき俺は有本の目を見た。半開きのその目は、人間の目とは思えぬものだった。白、黒、その二色がパレットの上で中途半端に混ざったような眼球。瞳は無い。目の形も普通ではなかった。垂れ目、というより、逆つり目とでも言った方がいい。
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