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 それから、おれは有本と次第に仲を深めていった。いつの間にか、松本よりもずっと距離を縮めていった。授業以外は、ずっと一緒にいた。いや、一緒に居なければならなかった。有本は階段を上がり下りするのも困難だったし、障害物の多い教室を歩くのにも時間をかけていたからだ。  有本の雰囲気は決して盲目で不細工というものではなかった。決して光を見れなくとも、何か別の光を感じている。普段眩しいところから暗いところに行くと恐いが、普段から真っ暗であれば恐怖はない。それが、有本の強さだったのではないかと思う。  先生は、有本に友達が出来て安心したようだった。先生は時々おれに、 「有本の様子はどう?」  など聞いてきたりした。  おれは先生を尊敬していた。それで、おれは教師になったのだ。教育、それは人間が繁栄する為の手段だ。人間が確りと根をおろせるように促す行為だ。それなしには一点の小火さえ難問題である。
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