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「笠原くん。……久し振り。」
気まずい空気が流れる。お互い三十歳。
「吉野さん。もう結婚した?」
「ううん、まだ。」
「一時は婚約しなかったっけ?」
おれが笑うと、吉野さんも笑った。気まずい空気が崩れ、和やかな雰囲気になった。一時期は、ずっといい関係を保っていたのだが、それが段々と崩れ、殆んど無くなってしまっていた。
話していると、松本が声をかけてきた。松本とは時々飲みに行ったり遊んだりと、幼稚園からずっと付き合ってきた。今こうして会ったところで、懐かしくはなかった。
「よぉ、笠原。なんだ、寄りを戻すきか?」
「悪いか?」
おれがそう言うと、吉野さんはまた顔を赤くした。照れた顔も、相変わらず、綺麗な顔立ちをしている。おれはまたあの頃のように戻りたいなと思ったりした。
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