野犬

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僕の村はすごく貧しい。 きっと大人が少なく子供が多いからだ。 少ない大人達は農業をして村の食料を支えている。 でもそれだけでは食料は足りない。 だから若い人達は村の外へ出稼ぎに行っている。 僕のお兄ちゃんも狩人をしている。 ほとんど村にいることは無い。 僕はよく淋しくなって夜村をこっそり抜け出してお兄ちゃんを探しに行く。 会える訳ないとわかっていてもお兄ちゃんに会いたい。 今日も僕は村を飛び出す。 村からずーっと東に歩いて行くと別の村が見えた。 そこには野菜がたくさんあった。 気がついたら僕は持てるだけの野菜を持って村に戻ってきていた。 盗みはいけないことだとわかってる。 だけどお兄ちゃんが頑張ってるのに僕だけ村でのんびり遊んでて良い訳が無い。 僕はその晩から毎晩友達を集めて野菜を盗みに行った。 そんなことするのは嫌だって言った奴もいたけど村の家族のためだと言ったら納得してくれた。 僕達はグループに別れて曜日ごとに盗みに行く順番を決めた。 月、火、水、木、金、土、日で五人ずつにした。 畑の周りに堀が掘られた。 でも僕達にはなんの苦にもならなかった。 どうやらその村人達は僕達を野犬かなにかと勘違いしているらしい。 僕達は頭にフードを被ることにした。 野犬に見えるように布の耳を付けた。 子供だってバレたら真っ先にこの一番近い村が怪しまれるから。 ある日お兄ちゃんが村に帰ってきた。 僕は嬉しくなってずっとお兄ちゃんの側にいた。 だけどまた違う村に仕事に行ってしまった。 その晩から盗みに行くグループが帰ってこなくなった。 僕達はいきなり怖くなってきた。 もしかして見つかったのかな…。 帰らないグループは増えていった。 必ず連れて帰って来るって言ったっきり帰ってこない。 村では大人達が騒いでいたけど僕達は何も言わなかった。 見つけて連れて帰ったらいいんだから。 とうとう僕の最後のグループに回ってきた。 僕達は怖かったけど友達を見捨てることなんてできない。 それに始めたのは僕だから…。 村が見えてきた。 僕達は堀を降りた。 降りた時に何かを踏んづけた。 なんだコレ? 見つめているとどんどん見えてきた。 たくさんの死体があった。 みんな友達だった。 他の四人も気付いたのか叫んだり泣いたりしてた。 僕も泣いていた。 すると僕の横にいた友達がいきなり泣きやんで倒れた。 見るとおでこに穴が空いていた。 残りの二人も倒れていった。
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