瘋癲病棟にて

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  僕は彼に別れを告げ、診察室に入った。 診察といってもずっと自分のこと、家族や学校のことを話すだけだ。ここに来た時はテレビなんかでよく見る催眠術をかけられるものかと思っていたけど、必要ないと判断されたらしい。 「やはり貴方は姜維伯約の転生だと仰るのですね」 「はい、事実ですから」 僕らの話す傍らで胡弓がゆっくりと流れている。 僕が診療室に入る時はいつも中国器楽がかかっている。前に理由を尋ねたら先生は薄く笑って「どうしてですかね」と答えてくれた。無意識で僕らの故郷の曲を選んでいる、という事実が嬉しかった。  
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