瘋癲病棟にて

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  「そして自分の身の回りにもいる、と」 「ええ。相変わらず良い人達ばかりです」 まず僕の家族。兄さんの恋人もそうだし、僕を可愛がってくれた高校の先輩もそう。この病院の彼や彼の主治医さんも同じ。 そして、目の前の先生もだ。 「世界は僕らが思う以上に狭いんですよ、孔明先生」 僕がそう呼ぶと、先生はちょっとだけ困ったように笑う。 放火癖の彼と同じように、先生もこれから徐々に思い出してくれればいい。 僕はそれまで狂人扱いされても、悪くないと思っている。 (了)
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