無知の幸福

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  乾と名乗ったその人は賢達のグループのリーダーなのだそうだ。 「高坂(タカサカ)君と里ヶ谷(サトガヤ)君は同じ部屋に泊まってもらうよ。座談会の場所は高坂君、教えてあげて」 「はい」 「座談会は一時間後。遅れないようにね」 「わかりました」 乾さんは鍵を渡し、そそくさと去っていった。リーダーという立場だけあって準備が忙しいのだろう。 「なあ、座談会って何をやるんだ?」 「僕らの信心の結果を先生にご報告するんだよ。智希も参加してみればわかるよ」 「でも参加って言っても……」 「学校みたいに資料作って、とかじゃないから。それに僕がちゃんと教えるから、大丈夫」 賢は俺の腕に細い腕を絡め、見たことのない笑顔を浮かべた。 丁度引き出しに隠している青年マンガの女のような、そんな笑顔だった。 「さっ、行こう。遅刻したら叱られるから」 「あ、ああ……」 腕を絡めたままの賢に引き摺られ、足を進める。洋館の最奥に位置する部屋の扉を開けると甘い香りが鼻を擽った。  
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