無知の幸福

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  純白のカーテンが何枚も下がった息苦しい部屋の奥には大きな仏壇があって、それを背にぶくぶく太ったオヤジが白いソファに腰掛けている。その周りには乾さんをはじめとする俺達と同じ位の青少年が十数人。床に座ってじっとオヤジを見つめていた。 「あの方が先生だよ」 賢が教えてくれた。 その先生なる人物は人間として好きになれそうになかった。 「では、始めようか」 そのオヤジがスーツの上着を脱ぎ、似合わぬ気障な仕草でネクタイを緩める。 同時に衣擦れがするが、オヤジのだけにしては大きすぎる。 見渡せば俺以外の全員が何の躊躇いもなく服を脱いでいた。 「ほら、智希も脱いで」 既に裸になった賢がバックルに手を伸ばす。 「賢、止めっ……」 「大丈夫だよ。ちゃんと信心すれば、幸せになれるから」 掠れた声で囁きながら、賢は細い指で内股を撫でる。   法華経ニ帰依シタテマツラム―――  法華経ニ帰依シタテマツラム―――   そして不気味な呪文と共に、白い腕が何本も伸びてきた。  
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