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「や、嫌だっ、賢……やだっ……」
漸くこの会合の異常さに気付き、纏わりつく腕に爪を立てた。腕は痛みに一瞬離れるが、また体を這いずりだす。
「嫌じゃないよね、智希。ここ、こんなになってるし」
「嫌っ、嫌だぁ……!」
「っ!」
今度爪を立てたのは賢の腕だったらしい。賢が憮然とした顔でこちらを睨みつけ、腕の血を舐めていた。
「乾さん、使ってもいいですよね?こんなに暴れちゃ、埒があきません」
「……そうだね。そこにあるから持ってくると良い」
「ありがとうございます」
仏頂面のまま賢が持ち出したのは透明な液体が入った注射器だった。液体の正体など解らないが、ヤバい物だというのはすぐに理解した。
「智希が素直だったら、こんな物を使わなくても良かったんだけどね」
掴まれた腕に針が突き刺さる。
淡々と作業を進める賢に涙が溢れてきた。
「安心して。後に残るような物じゃないから」
賢はいつものように笑って親指に力を入れた。
透明な液体はゆっくりと俺の中に消えていった。
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