849人が本棚に入れています
本棚に追加
「お蘭、その紅絹をここへ」
「……はい」
奇妙な格好を始めた信長に、思わず頬が引き攣る。
「殿、一体何が始まるんですか?」
信長は何日も前から用意をさせていた爆竹を秀政に渡すと、今度は錦袍を着け、紅絹で顔を包むとつば広の黒い南蛮笠を被り始めた。
「お蘭も秀政と共に城下に降りて楽しんで参れ
今日は左義長ぞ」
左義長
それは小正月に行われる火祭の一つで、信長が始めたその祭は現代でも続く400年の伝統的な祭である。
「襦袢って…
その格好はへ…変装?」
フンフンと鼻歌を歌う信長を残し、蘭丸は白山に跨がると秀政に連れられ山を下りた。
.
最初のコメントを投稿しよう!