妖の唄 ―妖が鬱ろう刻―

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『蜥屍(シャクシ)』 蜥蜴の身体に鬼の頭。これに憑かれると限りない倦怠感と焦燥感が常に付き纏う。 其処に生まれる負の感情を喰って生きている。喰うことにより、蜥屍は成長していき、害を併発させる。 神経質な人間などはすぐにノイローゼに罹り、最悪の場合――死に至る。 棲息地は眠れない人間の枕の裏。睡眠不足の人間は憑かれ易い様だ。 『疲れ』は『憑かれ』あなたもツカレてませんか? 「最近は『蜥屍』を飼ってる人が増えたねぇ――。覇気のない、この空虚な時代に堕とされた妖(あやかし)か――」 夕焼けを背負いながら、麒麟は懐から取り出した煙草に火を点けた。 紫煙を燻らせながら、ふと見上げた虚空(そら)は血の様に紅い色をしていた――。 ―了―
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