妖の唄 ―妖が鬱ろう刻―

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秋口。半袖がそろそろ寒くなってきたこの頃。 街はすっかり冬に向かって支度を始めていく気配だ。 道端には落ち葉。それを吹き上げる秋風。街並みを行く人々。 そして――その街並みで、その男――『稲生(いのう)彰文(あきふみ)』は尋常成らぬ疲れと苛立ちに襲われていた。 度重なる仕事のミス。それに次ぐ残業。更には、その残業の為に彼女との不仲。 完全に悪循環のスパイラルに嵌まり込んでいた。何もかも、巧くイカナイ状況。 ――くそっ!!何だってンだ!!ふざけやがって!! 彼の苛立ちは今がピークであった。 殺気立った目線で周りを見回す稲生。そこに映り込むは、何の悩みも無く笑う人々。 ――何で俺ばかり!!俺ばかりがこんな目に遭うんだ…!!!くっそぉ!!! 狂気が稲生に舞い降りる刹那!
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