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 専業主婦というものは、家事をやりやり終えてしまえば暇なものだ。  これで子供がいれば、その人数に比例して勝手が違ってくるのかもしれないけれど、私は。  毎日がだいたい同じ繰り返しだし、ハプニングなんて滅多に起きない。部屋を綺麗にして、亭主の栄養を考えて、常に笑顔を心掛けていれば用は足りる。  大袈裟を売りにしたワイドショーが終われば、急に退屈になるもので。一度見たドラマをもう一度だなんてそんなに暇じゃないの、とどうでもいい見栄を張ってリモコンの赤いボタンを押す。  そうして、静寂が包まれた部屋の真ん中で、テーブルに頬杖をついた私は瞳を閉じる。  瞼の裏側には、忘れられない恋がある。恋とくくっていいのかわからない。  でも、確かに始まりは恋だった。  不意に車のクラクションが聞こえてきて窓に目をやれば、アケビ色の空が広がっていた。  ……今日はから揚げにしよう。  から揚げを食べて、私はおかした過去に償うのだ。
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