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~教室(1年2組)~
私が玖珠先輩のことを知ったのは、今から1年前。私が、まだ高校に入学してからまもなくの頃でした。窓側の席だった私は、よく窓の外を見ていました。私の席からは、校庭が全て見渡すことが出来ます。私が、いつものように外を見ていると、1人の男子が目にとまりました。彼は、友達と楽しそうに話しながら歩いていました。それからも私は、その男子を度々見ました。その内、私はその男子を自然に目で追うようになっていました。その男子こそが、玖珠先輩だったのです。
「いつも何見てるの?」
外を見ていた私に話しかけたのは、高校に入ってからの友達の神谷 京香でした。
「あ、京香・・・。別に何も見てないよ!」
私は少し慌てて言いました。
「そんなはずないじゃん!いつも嬉しそうに外見てるし・・・」
京香は、私のことをよく見ていました。さすがは友達・・・隠し事は出来ないみたいです。私は、観念して言いました。
「えっと、あの人見てて・・・」
京香は、窓の外を見ました。そして、少しにやけて私に言いました。
「玖珠先輩のこと?」
「玖珠先輩?」
私は、この時初めて玖珠先輩の名前を知りました。そういえば、私は玖珠先輩のことを全く知りません。
「あの人でしょ?」
京香は、確認するかのように、玖珠先輩を指差して言いました。私は、その姿を確認すると、うなずきました。
「やっぱりね!」
京香は、なぜか嬉しそうに言いました。私は、なぜ京香が玖珠先輩について知っているのか、とても不思議でした。
「なんで玖珠先輩のこと知ってるの?」
「だって有名じゃん!美裕は知らないの?」
京香は、不思議そうに聞いてきました。私は、少しでも玖珠先輩のことを知りたくて、京香に聞きました。
「有名って?」
「玖珠先輩って、1年からの人気がすごいんだって!」
京香は、私に説明しました。そういえば、みんなが騒いでた先輩がいたような・・・
「そうなんだ・・・」
「まさか知らなかった?」
京香は、不思議そうに聞きました。
「うん・・・」
私は、うつむいて答えました。
「じゃあ、覚えといたほうがいいよ!」
京香は明るく言うと、その場を去っていきました。それからも、窓の外にいる玖珠先輩を見て、思いを馳せる日々が、しばらく続きました。しかし、そんな私に転機が訪れたのです。
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