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男は名の知れたバンパイアハンターでした。
数え切れないほどの吸血鬼を得意の双剣で闇に屠り、その名を世間に響かせていました。
容姿は美しく、身体も引き締まりたくましい、慈悲深く、正義感が強くて……きっと普通の物語ならば主人公にふさわしい器を持った男でした。
しかし、
ひゅん、ざしゅ
「ぐぁあ!?」
空を斬る音と同時に男の片腕は宙を舞います。
「あらまぁ、腕一本じゃ双剣じゃないわねぇ……強いて言うなら片手剣かしら。」
男と対峙するのは金髪で赤い眼をした若い女でした。
「ぐ……化け物め。」
女は化け物なんて言葉は似合わないくらい美しい姿をしていました。顔、髪、体……どれをとっても美しく、間違っても化け物ではありませんでした。しかし、それは容姿だけを見ればの話でした。
ひゅん、ざしゅ
再び空を斬る音、腹が裂け鮮血が飛び散ります。男は苦痛に顔を歪ませて、床に倒れこみます。
そんな男を見下して、女は指を一本立てます。
「まだ一秒しかたってないわよ。」
彼女の言うとおりまだ男が女と対峙してから一秒もたっていませんでした。彼女は名の知れたバンパイアハンターを一秒もたたずに屈服させたのです。
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