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着替えて、かばんを持って休憩室に戻ると、莉子しかいなかった。
テーブルの灰皿を見ると口紅のついたタバコが一本見えた。
「莉子お疲れ!最後のお酒のオーダーのところにつかまってたの?」
平然と何もなかったように振舞える私は役者に向いているんだろうか?
「そうなのよ。大学生8人に捕まった。もういい迷惑よね。」
怒ったような表情でもほんとに怒っているのか、そうでないのかの区別くらい付く。
「大変だったねー。じゃぁ、あたしはデートだからお先にー。」
そう。不自然なほど、私は自然に振舞おうとしていた。
「そんなにテンション高いの珍しいね?」
自然にと思えば思うほど、何かを隠そうとすればするほど、いつもとは違う行動をとってしまっているんだろう。
疑いのまなざしがこちらに注がれていた。
「そりゃあ、今日はおごってもらうつもりだし。今開いているお店思い浮かべてたらテンションも上がりますよ。」
最後は敬語だ。役者には向いてないかな。
「じゃぁお店閉まっちゃうし、明日開店がんばってね。」
と早口に言ってお店を出た。
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