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――“それ”を初めて見たのは、小学校に入学したての、まだまだ幼かった頃。
ゲームショップの店頭に置かれた、テレビ画面の向こうにいる“それ”は、大層迫力のある大剣を構えたイケメンな勇者と戦っていた。
漆黒の巨躯から成せる剛力で大地を吹き飛ばし、灼熱の業火で街を焼き尽くす大迫力の光景を、今でも鮮明に覚えている。
そして特に色濃く覚えているのが、自身の巨躯をも包み込める巨大な翼で、勇ましく飛ぶ姿。
画面の向こうにいる“それ”は、とても迫力があり恐ろしく、何より格好良かった。
当時、無類の動物好きで純粋だった僕を魅了した“それ”――
ドラゴン。
その日から、僕はドラゴンの虜となり、信じる様になった。
この世界のどこかに、ドラゴンが存在していると。
いつか僕の目の前に現れて、友達になってくれると。
そしてドラゴンの頭に乗って、この映像の様に広大な空を飛べると……純粋に信じていた。
もっとも今は――
ドラゴンなんて妄想生まれのファンタジーな存在、微塵も信じてないけど。
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