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広い荒野の真ん中で、二人の少女が背中合わせに立っている。
二人の周りにはやはり頭に黄色の布を巻いた黄巾党の男達。
連れの一人と別れてから一夜明けの昼。
何事もなくと願っていた矢先にこれだ。
「運のない、まさか星のいない時に限って出くわすとは」
少女の一人、肩を露出させ、腰元から開いた緑色の服を着た少女が呟いた。
「まぁまぁ稟ちゃん、出会ってしまってはしょうがないじゃないですか。それに星さんならすぐに終わらせてこちらに向かってきてくれてるかも知れないじゃないですか」
眼鏡の少女よりも薄い緑色の服を着た少女が、口に加えたキャンディーを手にのほほんと言った。
「風・・・そんなの、絶望的妄想でしかありません。現実は今にも斬られるか、認めたくはありませんが奴らの慰み物になるかのどちらかです」
「くー・・・Zzz」
「寝るな!!」
「おぉ!?」
風と稟のそんなやり取りを見ていた黄巾党の中から、一人の男が出てきて二人に近づく。
二人は・・・いや、稟は身構えるが、明らかに一人で二人を抑えることが出来るだろう大男だ。風は相変わらず口にキャンディーを加え、頭に乗せた人形の宝慧が絶妙なバランスでその場を維持しながら男を睨んでいる。
「なぁ嬢ちゃん達、ちょっと俺達と来てもらうぜ」
「疑問符すら付けずに言いますか、いやはや絶体絶命ですかねぇ」
「だからどうしてそんなに冷静なんですかあなたは!?」
風の言葉に的確なツッコミをしながら、稟は徐々に後ろへ後退していく。
しかし周りは囲まれているので、下がり過ぎると逆に後ろから捕らえられてしまう。
稟は八方塞がりの状況に苦虫を噛み潰したように眉間に皺を寄せ、旅の連れを行かせるのではなかったと後悔した。
そんな中、風が稟に対して笑顔を向ける。
「稟ちゃん、どうやら天は私達に味方してくれたみたいですよ?」
風の言葉と、絶望的妄想でしかなかった声が聞こえたの同時だった・・・
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