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星と二人、鬱蒼と茂る草木を別けながら進んで行くと、目の前にちょうどいい小川が見えてきた。
「ふむ。もう日も傾いて時間も遅い、今日はここで休もう」
星と出会って森を歩くこと数時間。
やっと休むことができるようだ。
「しかし・・・」
木の根に腰掛けた星の視線が、地面に置いたバッグを漁る俺に向けられる。
「ん?何だ?」
視線の中にひっかかるモノを感じ、星に問う。
「月夜の服や持ち物、武器が珍しくてな・・・」
それはそうだろう。
なんせこの時代にはバッグや鋼糸、スーツなんてものはありはしないだろうからな。
とりあえず、しらばっくれてやり過ごすことにしよう。
「こいつらは俺が使いやすいように造ったからな。見たことないのも当たり前だよ」
「ほぉ。成る程月夜は意外に器用なのだな」
「ははは・・・」
意外には余計だ!!
と思いながらも苦笑いでやり過ごすしかないんだがな。
「そろそろ身を清めるとしようか」
俺が荷物整理を続けていると、星がおもむろに川へと足を運ぶ。
「・・・ん?」
何事かと視線を向けて・・・・・・
即効で目を反らした。
何故かって?
星が服を脱ぎだしたからだよ!!
「せ・・・せせせ星さん?何で服を脱いでますか?」
「ん?川で身を清めるために決まっているだろう?」
平然と言ってくれるが、道中星には俺が男であることは話してある。ならば何故彼女は普通に服を脱ぎますか!?ちくしょー!!
「ち・・・ちょっと待ってろ!!」
俺は急いで木を鋼糸で切り倒し、分解し、板を何枚も造るとそれを底のない長方形に組み立てる。そして荷物の中から折り畳み式の鉄板を取り出す。
取り出した鉄板はちょうど長方形の隙間にきつい位にはまり込み隙間はない。
当然板を組み立てたやつにもだ。
金がなくてやってた大工の修業がこんな時に役立つとは・・・
そして長方形をひっくり返し、長方形より少し小さめの板を鉄板の上に置く。
長方形の四隅の下に大きめの石を置いて下に火を幾つか起こし、飲み水を入れる竹筒で水入れるのに川とソレを数往復し・・・
周りに布で幕を張れば出来上がり・・・
「ふむ。すごいな月夜は・・・」
星はソレを見て感心しながらも驚いている。
なぜならソレは紛れも無い「風呂」だからだ。
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