名無しの少年

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昔、とてもみすぼらしい格好の少年がいました。 少年には名前がありません。ので村人は、それぞれの呼び方で呼んでいます。 「あら、スティン。(汚れの意味のステインより)今日も仕事探し?」 「お、フィルスト!!(汚物の意味のフィルスより)今日も臭せえなぁ!!!」 「なんだいノーパティ(名無しの意味のMr.nobodyより)、また来たの。今日も香水つけないとダメだねぇ。仕事になりやしない。」 この日も、唯一働かせてくれるパン屋の大柄なオバさんに働かせてもらっていた。 いつも仕事は、汚い物ばかりだ。それでも少年には、ありがたい事なのだった。 「はい、今日の給料。」 仕事が終わるとオバさんは、ほんの少しの給料を渡す。そのままでは、一番安いパンも買えない程の金だ。 でも、少年はそのお金で廃棄寸前のカチカチになったパンを買う。 これが彼の食事だ。 当然給料は無くなり、そのカチカチになったパンも2~3日で食べきる。 そしてまたオバさんのところで働く。 その繰り返しだった。
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