名無しの少年

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ある日少年は、家と呼ぶには粗末な拾い物の山から起きようとした。 その時である。 「お前か。孤児(みなしご)。」 「………!!」 言葉を識らない少年は、自分よりもはるかに大きい男性に驚く。 「なんだ。言葉も知らねえのか。」 「………」 こくん、と頷く少年。 「言葉が…わかるのか。」 驚いた男性は、そう聞いてみる。 すると、またこくん、と頷く。 「識らねぇ…わけではない、か。喋れねぇだけか。」 1人納得すると、男性は 「明日、あの城にこい。王子さまがお呼びだ。」 と、城を指差した。 その城は、白い城壁、赤煉瓦の屋根というような皆さんご存じのお城のイメージそのままの造りだった。 それにこくん、とまた頷く少年。 しかし、彼は相手が口を開き、閉じる時に頷いていただけだ。 まさか自分が城に行くよう言われたと夢にも思っていなかった。 用件を伝えた男性は、城へ戻ろうとする。 すると。 「…………」 後ろから、ちょこちょこ少年がついてくるではないか。 「おい、城へ来るのは明日だよ。さっき聞いてただろう?」 少年はさらに歩きながら、頷く。 「なら、ここでお別れだ。じゃあな。」 こくん。 頷くが、男性が歩きだすとまたちょこちょこついてくる。 結局、少年は城までついてきてしまった。
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