灰被り

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地方と呼ばれる都市の中でも田舎町。 昔ながらの家屋が所々にある他はただ田畑がひしめいている。 そんなドが付く田舎で育った俺、金森海斗カナモリカイト。 趣味は人間観察。 …人間いねぇけど。 「海斗ー。降りてきなさーい。」 ババァ(母親)に呼ばれて急いで向かう俺。 すっげえ良い子。 俺が母親なら俺の事超愛しちゃうね。 めちゃめちゃ甘くしちゃうね、これ。 「遅い!!ベストタイムより1.56秒も遅いわよ!!もっと本気で走りなさい!!」 「煩ぇ糞ババァ。 何で毎回ストップウォッチ常備してんだよ。 何で記録計ってんだよ。」 「海斗の為よ。 いつも言ってるでしょ? 自分を知る事は大切な事なの。 社会人になって『母親に呼ばれてから行くまで何秒かかりますか?』って面接で聞かれてごらんなさい。 答えられないなんてアウトよ。」 「んな事聞く面接官がどこにいんだよ。」 「都会じゃ常識よ。 えっ?まさか海斗…知らないの?」 「…しっ知ってますぅ!! ボケただけだしぃ? つーか、それマジで常識中の常識じゃん! 知らねえ奴とか普通いねぇし!!」 いつか都会に出た時、恥をかく所だった。 口にはしないが教えてくれたババァに感謝せねば。 「なら良いのよ。 海斗、商店街に行ってくれないかしら?」 「は?何で?」 ババァは悲しそうに言う。 こんな顔見たことなくて商店街で何かあったのかと焦る俺。 「福引きが今日最終日なのよ。 ママすっかり忘れちゃってて。 お願い海斗。 ママの代わりにお米券をゲットしてきてちょうだい。 じゃないとママ…ママ…。」
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