一章 桃園の誓い

13/13
前へ
/89ページ
次へ
知らないことがまた出てきた。この世界にいる以上これからも、いろんなことを知るんだろうな。 アイシャ「我らの持つ本当の名前です。家族や親しい者にしか呼ぶことが許されない、神聖なる名……。たとえ、知っていても親しい人以外は、口に出してはいけない名です」 リンリン「でもお兄ちゃんには呼んで欲しいのだ!」 三人の六つの瞳が、俺に集まる。それは、どれもが期待を込めたもの。それは俺に対しての彼女たちの、信頼の証。 「真名かぁ……わかったよ。じゃあ…」 アイシャ「我が真名は愛紗。」 リンリン「鈴々は鈴々なのだ♪」 トウカ「私は桃香。」 三人の真名を口の中で繰り返す。 「うん。桃香、愛紗、鈴々、これからよろしくな。」 そうして、俺の言葉に三人は強く頷き、手に持つ盃を空に向かって高々と掲げた。 アイシャ「我ら四人っ!」 トウカ「姓は違えども、姉妹の契りを結びしからは!」 リンリン「心を同じくして助け合い、みんなで力無き人々を救うのだ!」 アイシャ「同年、同月、同日に生まれることを得ずとも!」 トウカ「願わくば同年、同月、同日に死せんことを!」 「乾杯っ!!」 ここに、世に有名な桃園の誓い。 それが目の前で繰り広げられている。 その事の意味を深く胸に刻みながら、俺は戦乱に満ちた歴史の中に一歩、足を踏み出すのだった。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

897人が本棚に入れています
本棚に追加