一章 桃園の誓い

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部活を終えて友人とくだらない馬鹿話に花を咲かせながら、通学路を歩く少年たち。 好きな男の子の名前を出され赤面しながらも、鞄を振り回し友達を追いかけ、追いかけられながらも笑う少女たち。 夕飯の買出しに来て、立ち話をしているおばさんたち。それに、付き合う子供たち。 そんな人達を眺めながら…… 「また明日な」 「おう。んじゃまた明日ぁ~。」 俺は友人とお決まりの挨拶をしてから、目の前のドアを開けて家の玄関へと入る。 今日も部活疲れたなぁ……先風呂入ろっかな。 「ただいま~。母さん風呂沸いてる~?」 「おかえり~。まだだから部屋で待ってて~。沸いたら教えるからぁ」 俺の言葉に台所からだろう大きな声で返す母さんの声を聞き、 「わかったぁ~」 と返した後、階段を上がり自分の部屋へと向かった。 部屋に入ると鞄を放り投げ、制服をそのままにベットへとダイブした。 顔を枕に埋めたまま、右手を大きく動かす。目当てのものを探して3往復くらいしていると、目当てのものを探し当て右手の人差し指でそれのボタンを押す。 「あぁ~。やっぱり夏はコレだよなぁ」 埋めていた顔をそれの方へと向ける。すると、髪が風で後ろの方へ流れていく。 はぁ……気持ちいい♪ そうコレとは扇風機のことだ。 「あぁ~だりぃ~。まじ動きたくねぇ。風呂が沸くまで一眠りすっかなぁ。」 そうして、俺は扇風機のおかげで涼しくなっていき、瞼を閉じてスヤスヤと眠りに落ちていった。 ただ、これがこの世界で最後の瞬間になるとはこの時、俺は露程も思いはしなかった。
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