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敵の後ろから鈴々達が来る前に、少しでも油断を誘い、更に混乱させるのが狙いだ。
それが出来るのは、愛紗がちゃんと俺の後方で敵が追いかけないように、掃討しているおかげ。だから俺は真っ直ぐに突き進んでいける。
「はぁあああ!!せいっ!」
斜めから降り下ろされる剣を左の手甲で受け、右拳を敵の心臓がある部分に打ち込む。
そうすれば、一瞬身体の動きが止まる事を俺は知っている。
動きが止まった敵に、味方の兵の一人が槍を喉に突き刺す。
血飛沫を顔で受け、気持ち悪くなっていたのはもう昔のように感じる。
そこに、今度は俺の身長の倍はあろうかという、図体のでかい黄巾党の兵が俺たちの前に立ちはだかった。
コウキントウ「グェヘヘへ……虫けら風情が随分と粘るじゃねぇか。」
「おうおう、言ってくれる。あんたらこそ、俺らみたいな数が少ない奴を相手に、随分と苦戦してるみたいじゃねぇか?」
挑発を挑発で返すと、図体のでかい黄巾党兵は、顔を真っ赤にするとその図体に似つかわしい、大きな長戟を天に向かって高く上げた。
ちなみにここで上げた戟(ゲキ)とは、古くから中国に存在する武器で戈(カ)や矛(ホコ)の機能を備えたもの。矛を思わせる先端の穂先は刺(シ)、戈を匂わせる横に突き出た刃は援(エン)もしくは枝(シ)と呼ばれている。その中には、関羽が持つ青龍偃月刀も入る。
簡単に言うと馬鹿でかい斧を連想すればいい。
人の身体をたやすく肉塊に変えてしまいそうなそれを見ると、冷や汗が背を流れるのを感じた。
コウキントウ「おのれ小童!その減らず口もここまでだぁ!」
戟を凄い勢いで降り下ろしてくるそいつを、右に大きく避けて回避しようとするが、敵味方が多すぎて、避けようにも避けられない。
万事休すかと思ったその時、
コウキントウ「な、なに……グフッ」
その黄巾党の胸から矛の先端が伸び、刃を血で濡らしているのを見た。
リンリン「鈴々、参上なのだぁ!!」
矛を抜き黄巾党を足蹴に鈴々が、飛び出てきた。
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